Greycoat Research

学ぶ

猫の尿路結石:445匹を対象とした研究で明らかになった遺伝的要因について

猫の尿石症:445匹の猫を対象とした研究からわかった遺伝との関係

尿石リスクの理解と、今日から始められる3つの実用的なケアのヒント

 


アレックス・シン(薬剤師)| Greycoat Research
慢性腎臓病ステージ2または3の猫の飼い主様向けコンサルテーションを5,000件以上実施
栄養処方アドバイザー

猫の尿石症と聞くと、おそらく食事や水分のことを最初に思い浮かべるでしょう。

しかし、猫の遺伝子が関与している可能性はあるのでしょうか?

ある研究では、特定の遺伝子グループに属する猫は、そうでないグループよりも結石ができやすいことがわかりました。研究者が何を発見したのか、そして猫のケアに役立つ3つの実践的な方法をご紹介します。


遺伝子と尿石症:研究でわかったこと

2022年に発表された研究で、研究者たちはある研究施設の445匹の猫を調査しました。彼らは「AGXT2」と呼ばれる遺伝子の異なる型と、猫の腎臓結石や尿路結石の既往歴を比較しました。

結石の既往歴は、GGグループよりもAAグループで約2.5倍多く見られました。AAとGGは、AGXT2の異なる遺伝的タイプを表しています。

この結果は、当該グループの猫において、この遺伝的差異が結石の既往歴に関連していることを示しています。これは、特定の遺伝的タイプを持つ猫が必ず結石を発症するという意味ではありません。

結石がある猫の場合、ケアはその結石の種類によって異なります。ここでは、猫に最も多いタイプの一つであるシュウ酸カルシウム結石に焦点を当てます。


シュウ酸カルシウム結石は食事で溶かせない

シュウ酸カルシウムとストルバイトは、猫に一般的な2種類の尿石です。重要な違いは、療法食で溶かせるかどうかという点です。

結石の種類

既存の結石は溶かせるか?

シュウ酸カルシウム

いいえ。現時点では食事や投薬で溶かすことはできません。

ストルバイト

多くの場合、適切な療法食で溶かすことが可能です。

シュウ酸カルシウム結石の治療は、結石のサイズ、場所、尿流への影響によって異なります。除去が必要な場合は、手術や全身麻酔下での処置が行われることがあります。

問題を引き起こしていない腎結石は、画像診断で経過観察を行うことがあります。しかし、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管である尿管を塞ぐ結石は腎臓にダメージを与えるため、早急な治療が必要です。

シュウ酸カルシウム結石であっても食事は重要です。適切な食事と十分な水分摂取は、経過観察や必要な治療と並行して、新たな結石のリスクを低減するのに役立ちます。


小さな結晶がどうやって結石になるのか?

シュウ酸カルシウム結石は、尿中でカルシウムとシュウ酸が結合することで形成されます。シュウ酸は食事から摂取されるほか、体内でも自然に生成されます。

尿が濃縮されすぎたり、尿中のカルシウムやシュウ酸の濃度が高くなると、小さな結晶が形成されやすくなります。その一部は尿路に残り、成長したり集まったりして結石になります。

そのため、継続的なケアには水分補給、食事管理、定期的な検査を組み合わせることが不可欠です。


猫のケアのための3つの実践的な方法

食事に水分を加える

十分な水分を摂ることは、尿の濃縮を防ぐのに役立ちます。

猫がドライタイプの療法食を食べている場合は、同じ疾患向けに設計されたウェットフードを探してみてください。現在食べているフードに少量の水を混ぜることも有効です。

大切なのは、猫がしっかり食事を摂れるようにすることです。水を加えた後に食欲が落ちるようなら、水分量を減らすか、好みのテクスチャーのウェットフードを試してください。

結石の種類に合わせた食事を選ぶ

愛猫がシュウ酸カルシウム結石である場合、そのフードがシュウ酸カルシウム結石の再発リスクを低減するために設計されているか確認してください。「尿路の健康」と書かれているだけでは、どの結石に対応しているかはわかりません。

除去した結石を分析できれば、その結果がフード選びの指針となります。尿検査で見つかった結晶が、必ずしも体内の結石の種類と一致するとは限らないからです。

また、シュウ酸カルシウム管理において、尿を過度に酸性にする食事は避けることが重要です。腎臓病を併発している場合は、腎臓の健康維持と結石管理の両方をサポートする食事が必要です。

検査結果のどこに注目すべきかを知る

尿検査、血液検査、画像診断はそれぞれ異なる情報を提供します。結果を確認する際は以下の点に注目してください。

検査項目

確認すべきこと

尿検査

尿比重(尿の濃さ)および尿pH(酸性度)

血液検査

血中カルシウム値が高くないか

超音波・X線検査

結石のサイズや位置の変化、新しい結石の有無

尿検査で結晶が見つからなくても、結石がないとは限りません。すでに結石が見つかっている場合は、画像診断で経時的な変化を追うことが大切です。

自宅では、トイレに行く回数や排尿量を観察しましょう。何度もトイレでいきんでいるのに尿がほとんど出ない場合は、すぐに動物病院を受診してください。

ビタミンB6は効果があるか?

ビタミンB6は、体内でシュウ酸が作られる過程に関与しています。

あるヒトの研究では、尿路結石があり尿中のシュウ酸濃度が高い95人を対象に調査を行いました。食事指導とB6サプリメントの両方を受けたグループでは、1日あたりの尿中シュウ酸排出量が約30%減少しました。

この研究ではB6単体の効果や、猫に対する影響までは検証されていません。

シュウ酸カルシウム結石を繰り返す猫の場合、食事内容や検査結果に基づき、B6サプリメントの併用がケアプランの一部として検討されることがあります。

愛猫の遺伝子についてもっと知るには?

AIM検査では、愛猫のAIM遺伝子の結果と、尿石に関連する遺伝的変異の情報を提供しています。なお、先ほど述べたAGXT2遺伝子とAIM遺伝子は異なる遺伝子です。

これらの結果は愛猫の遺伝的特性を理解するのに役立ちますが、既存の結石を診断したり、将来の結石発症を予測するものではありません。尿検査や血液検査、画像診断は、愛猫の現在の健康状態を知るためのものです。


今日の食事から次の検診まで

次の食事から少量の水を混ぜてみて、いつも通りに食べられるか確認してみましょう。今食べているフードがどの結石に対応しているかを確認し、次回の検診時に過去の結果と比較してください。

Greycoat Researchでは、猫の腎臓・泌尿器系健康研究に関する分かりやすい解説と、家庭で実践できるケアのヒントをお届けしています。


著者・研究チーム紹介

アレックス・シンは、動物用医薬品のアドバイスで20年以上の経験を持つ薬剤師です。腎臓病の猫の飼い主様へのコンサルティングや、栄養処方のアドバイスを行っています。

Greycoat Researchは、日本や韓国の獣医師、薬剤師、研究者と協力し、猫の腎臓の健康と栄養に関する研究を行っています。

 

猫の腎臓ケア専門
Greycoat Research


[免責事項]

本コンテンツは、一般的な教育および情報提供を目的としています。
専門的な獣医療的アドバイス、診断、治療の代わりとなるものではなく、疾患の診断、治療、治癒、予防を意図したものではありません。
愛猫の健康については獣医師に相談し、食事やサプリメント、日々のケアを変更する前には必ず獣医師の指導を受けてください。